最近、テレビや経済紙などでもよく目にする「アンコンシャス・バイアス」について言葉の意味やアンコンシャス・バイアスの問題点から対処法、またアンコンシャス・バイアスを解消することが企業にとって大きなメリットになることもご紹介いたします。
この記事では「アンコンシャス・バイアス」について解説していきます。
目次
アンコンシャス・バイアスとは
まずはアンコンシャス・バイアスという言葉の意味を見てみましょう。
アンコンシャス・バイアスとは一種の「偏見」
アンコンシャス・バイアスとは無意識のうちに人々が持ってしまう偏った見方です。
「無意識の偏見」とも言います。
アンコンシャス・バイアスは無意識のうちに持っている偏見であるため、知らないうちに人を傷つけるようなこともあります。
自分では「当然」と思っている価値観だからこそ、知らず知らずのうちに行動や発言に自然と現れてしまうのです。
よくあるアンコンシャス・バイアスの例
代表的な例の一つが男女の能力差に対するアンコンシャス・バイアスです。
例えば女性には一般的に以下のようなイメージを持つ人が多く存在します。
- 丁寧に仕事をするため事務仕事が向いている
- 数字に弱く、集計作業が苦手
このようなアンコンシャス・バイアスが働いてしまうと個人の能力を考えずに仕事を振ってしまうことがあります。
例えば数字に強く、事務仕事が苦手な女性は多く存在しますが、「女性だからこの仕事は得意だろう」と言う偏見で事務仕事を主な仕事として任せると十分に能力を発揮できない可能性があります。
他にも外国の方に対するや出身地、年齢などさまざまなところでアンコンシャス・バイアスは存在しています。
なぜ今「アンコンシャス・バイアス」が注目されているのか
アンコンシャス・バイアスはなぜ今注目されているのでしょうか。
その理由として「ダイバーシティ」が推進される組織が増えていることがあげられます。
ダイバーシティとは多様性を認めてさまざまな人が活躍できることです。
ダイバーシティを推進し、強い組織を作るうえでアンコンシャス・バイアスは大きな阻害要因になってしまいます。
アンコンシャス・バイアスを生み出す3つの要因
アンコンシャス・バイアスはなぜ生み出されてしまうのでしょうか。
アンコンシャス・バイアスが生み出される3つの要因を見ていきましょう。
1.過去の経験や価値観
アンコンシャス・バイアスを生んでしまう最大の理由は過去の経験や価値観です。
過去の経験から生み出される「こうあるはず」、という考えや過去の価値観から生み出される「こうあるべき」と言う考えで物事を偏った見方をしてしまいます。
2.習慣や慣習
過去の習慣や慣習もアンコンシャス・バイアスを生み出します。
過去に経験したことや感じたことは人間の脳裏に深く刻まれますので、抜け出すことが難しいでしょう。
また慣習もアンコンシャス・バイアスの原因となり得ます。
例えば長年女性がお茶出しをしていた会社では「女性がお茶出しをするべき」というアンコンシャス・バイアスからなかなか抜け出すことができません。
3.感情
人間の感情もアンコンシャス・バイアスを生み出す原因となります。
妬みや嫉妬、怒りが無意識のうちに人の意識に影響をもたらすからです。
感情によってアンコンシャス・バイアスが生じてしまうと嫌いな人のいい部分が見えなくなってしまい、逆に好きな人の悪い部分を「そんなはずはない」と思って受け入れられないようなこともあります。
仕事に悪影響を及ぼすアンコンシャス・バイアス
アンコンシャス・バイアスは仕事にもさまざまな場面で悪影響を及ぼします。具体的に確認しておきましょう。
ハロー効果
ハローとは「後光」のことで、ハロー効果とは人やものの見た目の印象などによって評価が左右されるという効果です。
例えば芸能人がSNSで商品について書いていると「いい商品に違いない」と思い、無意識のうちに信頼してしまうということです。
ビジネスにおいては本質的な部分を見極めないといけない場面は多々ありますが、ハロー効果によって判断が鈍ることがあります。
アインシュテルング効果
アインシュテルング効果とは馴染みの深い方法にこだわって最適な方法を選択できないというバイアスです。
たとえ効果が高そうな方法であっても、経験が少ないという理由で選択肢から排除されることによってビジネスチャンスを逸することもあります。
正常性バイアス
正常性バイアスとは自分にとってリスクとなる事柄を無視したり、起こる可能性を低いと思い込むバイアスです。
ビジネスの場面では多くの企業にとって顕在化しているリスクに対し、根拠もなく「我が社は大丈夫」と思い込んでしまうこと等があります。
確認バイアス
確認バイアスとは自分が持つ仮説に対し肯定的なデータや意見にだけ注目してしまうバイアスです。
ビジネスの世界では自分が立てた仮説を検証しなければならない場面が多くあります。
確認バイアスによって正しい判断が下されなければ判断を誤る危険があります。
権威バイアス
権威バイアスとは権威のある人が言うことは全て正しいと思い込んでしまうバイアスです。
権威がある人が発言していても正しい検証がされずにただの仮説を言っているに過ぎない場面も多くあります。
例え権威がある人の発言であったとしても、しっかりと仮説を検証する必要があります。
集団同調性バイアス
集団同調整バイアスとは他人とは違う目立った行動をとらず、人と同じ行動をとりたがる人間の傾向です。
多くの人がとっている選択肢が必ずしも正しいとは限りません。しっかりと自分自身で判断する必要があります。
補足:えこひいきや差別は人事や採用にも影響を及ぼす
アンコンシャス・バイアスによりえこひいきや差別が発生すると昇給や配置転換などの人事や採用にも影響してしまいます。
人事は会社の重要な意思決定でもありますので、なるべくバイアスを排除して公平に行う必要があります。
アンコンシャス・バイアスをなくすには トレーニングと対処法
アンコンシャス・バイアスはトレーニングによって対処することができます。
アンコンシャス・バイアスをなくすために有効なトレーニングを見ていきましょう。
主語が大きい言葉は要注意
「女性って◯◯」、「男性は△△」、「若者は…」「中年は…」「日本人は…」と主語が大きい言葉は要注意です。
女性でも一人ひとり考え方や価値観、得意・不得意はことなります。
また「看護師は女性」「キャビンアテンダントは女性」「建設現場で働く人は男性」といった職業から人物像を考えることも要注意です。男性の看護師もたくさんいますし、建設現場で働く女性もいます。
主語を大きくひとくくりで考えず、その人の気持に立って考えましょう。
自分と相手が違うことを認めよう
アンコンシャス・バイアスは自分と相手が違うことを認めることで対処することが重要です。
自分の考えを押し付けることでアンコンシャス・バイアスは生まれてしまいます。
人はそれぞれ違うことを認めることでアンコンシャス・バイアスを防ぐことができます。
『決めつけ』『押しつけ』言葉をやめよう
アンコンシャス・バイアスは自分の価値観や過去の経験から来ていることも多くあります。
自分の考えから「こうあるべきだ」と決めつけたり、押しつけてしまうと他人には不愉快な場合もあります。
自分の発言が決めつけ、押しつけにならないように意識することが重要です。
ロールプレイイングやディスカッション
アンコンシャス・バイアスは「無意識」であるため、自分とは気づきにくいもの。
ロールプレイングやディスカッションを行うことで無意識のうちに発生しているアンコンシャス・バイアスに気付くことができるでしょう。
企業が行う研修制度もある
アンコンシャス・バイアスは企業の活動を阻害することもあります。
そのため、研修を行なってアンコンシャス・バイアスに対処する企業もあります。企業全体で陥っているアンコンシャス・バイアスは企業内ではなかなか気づきにくいものです。
外部講師を招くことで組織の中では気付くことができないアンコンシャス・バイアスに気付くことができます。
アンコンシャス・バイアスを解消することは企業にとって大きなプラスに
アンコンシャス・バイアスを解消することで企業にとってプラスになることがたくさんあります。
いくつかの事例をご紹介ます。
ハラスメントの予防・防止
「女性だから」といったセクシャルハラスメントから「若手はお酒を飲め」とったアルコールハラスメント、「◯◯歳ならもう結婚しないと」といったマリッジハラスメント、など企業内におけるハラスメント行為の予防になります。
アンコンシャス・バイアスを解消することで、一人ひとり考え方・価値感・得意不得意を尊重した企業風土が出来上がります。
女性管理職・役員の増加
「事務職は女性、管理職は男性」といった考えだと女性社員の採用や社内での活躍ができません。
労働力が減っている現在、男女年齢に関係なく優秀な人は管理職となり活躍すべきです。
アンコンシャス・バイアスの解消により女性管理職が増えることで、女性の採用増加、社内での女性社員の活躍へと繋がります。
チームの風通しが良くなり成績が向上する例も
アンコンシャス・バイアスがなくなることでいろんな考え方を受け入れられうようになります。
当然、周りへの相談や社内の風通しもよくなるので、労働環境は向上します。
正当な評価を受けられる
アンコンシャス・バイアスがなくなることで実績を上げたことに対する正当な評価をされ、周りの社員のモチベーションアップにも繋がります。
成果をだしても「女性だから」という理由で出世しない、だと他の社員のモチベーションは上がりません。
アンコンシャス・バイアスを解消して評価制度を整えることは、社員のやる気アップにもつながるとても重要なことです。
アンコンシャス・バイアスとは まとめ
アンコンシャス・バイアスによって組織の活動がうまくいかなくなってしまう場合もあります。
しかし、アンコンシャス・バイアスは無意識のうちに抱いてしまうため、なかなか対処は難しいもの。
自分たちで少しずつ意識したり、外部の講師に気づかされることで初めて気付くものもあるでしょう。
組織の運営を阻害しないためにも自分たちがどのようなアンコンシャス・バイアスを持ちやすいのかを常に意識しておく必要があります。