「事務職」ー 皆さんはこの職種に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。
経理事務や人事労務事務、法務関連などの専門性が高い事務業は別として、一般事務や営業事務といえば「気配りができれば簡単にできる仕事」というイメージが今も昔も先行しています。
現に70~90年代のドラマだと「事務員」はコピー取りや来客や同僚に対するお茶汲みなどの仕事をメインに描かれていました。この表現は極端な例ではありますが、当時の世相や一般的な事務のイメージをよく表しているといえるでしょう。
しかし現在の事務職はそんなことはありません。
一般事務でも高度な知識資格や機転を効かせた対応、幅広い業務知識が求められるケースも多く、昔のドラマのイメージとはまったく異なるものとなっています。いま中小企業の事務職は「気配りができれば簡単にできるお茶汲み仕事」から「やりがいのある重要なポジション」に変わってきているのです。
リカさん
この記事では、まず「事務職」が何かをあらためて説明した後に、中小企業の事務職が一体どのようなものかをご紹介いたします。
目次
「事務職」ってどんなお仕事?
中小企業の事務を見る前に、そもそも「事務」とは何かを見ていきます。
会社は大きく分かれて2つのセクションに分かれます。
「お客様との接客や営業活動を行う部門」と、「それをサポートする部門」です。
営業活動を行う部門はお客様に直に接することから「直接部門」「フロントオフィス」と呼ばれます。
サポートする部門は直にお客様と接することがない、あるいは少ないことから「間接部門」「バックオフィス」と呼ばれます。
事務職はこの間接部門(バックオフィス)に位置します。
事務職は、会社が円滑に回るようにさまざまな業務のサポートに回る職種です。
書類チェックや訂正、ファイリング・データの入力・一時的な電話応対や郵便物の回収配送等を担当します。
また大企業では配属される部署や関わる業務によって事務業が細分化されるケースがあります。
営業のサポートに特化した「営業事務」や一般的な雑務中心で専門性が低い「一般事務」はもちろんのこと、経理会計を担当する「経理」、採用人事を担当する「人事」や外部向けPRを作成する「広報・広告」等も大きな枠では事務に含まれます。
中小企業の事務職とは?
では中小企業の「事務」とはどのような業務なのでしょうか。
中小企業では、大企業のように「営業事務」「経理事務」「総務事務」「広報事務」といったように事務が細分化されていないケースがほとんどです。
これは専門性が高い人を複数人雇うのが企業体力として難しいこともありますし、専門性の高い部署を設けても、そこまで日々仕事がないこともあります。
しかしながら専門のセクションがなくとも、会社として運営する限りは中小企業とはいえさまざまな事務業務が発生します。そのため中小企業では、上記事務業務全般を「事務」として全体的に担当することとなります。
ハジメ
以下では中小企業で割り当てられることが多い事務事業をご紹介します。
一般事務
一般的な事務業務です。データ入力や書類整理、受電、来社受付対応などがメインの仕事にあげられます。
規模の小さい中小企業では、これから紹介する「営業事務」「経理事務」「広報事務」などの仕事を全て一般事務が引き受ける場合があります。
そのため、事務の中で一般事務が一番楽とは言い切れないのが現状です。いろいろな種類の事務をやるのか?それとも一般的な事務作業だけをやるのかは採用内容をしっかりと見る必要があります。
また冒頭でデータ入力や書類整理などがメインの仕事とお伝えしましたが、良い意味でも悪い意味でも一般事務が行う仕事は「なんでも屋さん」です。いろいろな雑務を任せられるのが一般事務になります。
営業事務
営業事務とは、文字通り営業担当者の業務をサポートするお仕事です。
営業部門が働きやすいように前もって下準備をする、あるいは業務の後処理をします。たとえば営業活動で使用される資料や書類の作成や伝票作成、商品発送、書類の処理、電話・来客応対などです。
営業事務は基本的に営業担当の方とチームで動くことが多く、営業担当の予定を把握し、営業担当の代わりに社内での書類作成やデータ入力を行ったり、担当者が不在の場合には顧客の問い合わせやクレーム応対、来客対応などの業務も求められたりすることも多く、事務と言っても多くの人と関わる仕事になります。
営業担当者に適切なサポートを行うため、「秘書検定」や「書類作成のためのスキル」、経理に役立つ「簿記」などの資格・スキルがあると非常に強みになります。
通常の事務職に比べ業務の幅が広く事務作業だけでなく、ときには対人スキルも必要となりますので一般事務に比べやや時給も高いお仕事です。
必要なスキルが多いことと、営業担当者との関係性も非常に重要になるため、多くの企業で採用が行われています。
貿易事務
リカさん
通常の事務職よりも扱う書類がはるかに多く、それに伴い時給も事務職の中では高い水準となっています。輸出入の際の「貿易書類」と呼ばれる複数の書類や、代金の支払いや回収に必要な書類の作成、処理が主な業務となります。
また貿易に関する書類は英語で記載されていることが多いため、書類の内容を把握し関係者と正しく意思疎通ができるだけの英語の能力が必要となります。
ハジメ
ここまでだと貿易事務は非常にレベルが高く、難しい職種と感じますが派遣登録をするとこのような貿易業務についての研修を受けられたり、通関士などの貿易業務に関する資格取得をサポートしてくれたりする派遣事業者も多いです。
また正社員ではなく派遣社員から始めることで、業務量が多く求められるスキルが高水準な業務でも未経験から経験を積むことができます。
大企業であればそれぞれのセクションに事務職がいるのですが、中小企業の場合これら全般を少人数で対応しなければなりません。幅広いので大変さもありますが、自分自身の業務の幅も広がるのでやりがいのあるとも言えます。
総務事務
総務事務は総務部で働く事務、もしくは中小企業では総務的な役割を依頼される事務になります。
総務は社内の全スタッフをサポートする業務です。
備品管理や発注、設備・不動産管理、インフラ整備、福利厚生、忘年会、社員旅行など作業は多岐にわたります。また会議や株主総会が開かれる場合は、運営の準備や書記を担当する場合もあります。
人によっては一般事務と似たような印象をうけます。一般事務は来客の案内や電話の受付、データ入力や会議室の準備などを行います。それに対して、総務事務は会社全体の管理に必要なこと(福利厚生のこと、備品整理、株主総会)を中心に行う事務になります。
特に株主総会で会社の一大イベントになり、準備することがたくさんあります。加えて株主総会には法律で決まっていることもあり、専門知識が必要となってきます。逆に株主総会の準備が一通り自分できるようになれば、キャリアとしてアピールできるようになります。転職にも有利になることは間違いありません。
ただし、会社の規模が小さければ、一般事務の仕事を行いながら総務に関係する事務も手伝うことがあります。
経理事務・会計事務
中小企業でも会計事務所や税理士事務所と顧問契約を結んでいるケースが多いですが、その事務所に提出するための一次的な資料を作成します。また小口精算、預金管理、売上・入金確認、経費精算なども担当します。
個人商店に近い形態の場合は、確定申告や決算、またそれに必要な貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書等の資料を作成する場合もあります。
また、他の事務と異なり年度末や決済時期になってくると報告書類作成などの仕事が入ってきます。時期によっては残業が必要になってくる会社は少なくありません。
会社によっては、簿記関係の資格がないと求人への応募もできない場合があります。その分、一般事務と比べて専門性が高い分、給料は高い傾向にあります。
そんな会計事務・経理事務へのなり方は少し特殊なので下記の記事で詳しくご紹介しております。
人事事務
経理・会計と同じく、外部の社労士に委託あるいは顧問契約を結んでいるケースが多いです。中小企業では、勤怠管理や給与計算・年末調整などを行う「給与計算」、人材募集から選考までを担当する「採用」などが主な労働内容となります。
また、会社の規模がそれなりの大きさになってくると、新人研修の手伝いを行うこともあります。もちろん、採用活動のサポートもありますし、加えて異動の手続きがあったりと年度の切り替えで前後で忙しくなることが多いです。
それを除くと、一定の作業内容の繰り返しで外部とのやり取りもあまりないので、比較的ゆとりのある勤務をすることができます。
近年はパワハラやマタハラ、セクハラなどのハランスメント問題が表面化してきているので、人事部の役割は重要になってきます。
広報・PR事務
会社のイメージや業務内容を外部にPRする広報部の事務仕事になります。
ポスターやチラシの作成を手伝ったり、店頭の販促ツールやDM(ダイレクトメール)などを制作したりと作業内容が広報に関することに特化しています。
また、事務といえば社内で完結するイメージがあるかもしれません。しかし、広報事務は新商品のプレスリリースの準備のために外の会場を借りたり、イベントの準備をしたりする仕事もめずらしくありません。
特別な資格は必要ありませんが、最初に紹介した通りポスターやチラシの作成を手伝うこともあります。目指すのであればイラストレーターなどのソフトを扱えたほうが有利になります。
新商品の発表やトラブルが起きてマスコミ対応が必要になった場合など、不定期に忙しくなる傾向があります。
「事務職」志望先の企業についてチェックすべきこと
中小企業の主な事務内容にについて見ていきました。会社によって上記で説明した業務に加減がされるケースがあります。
ここで気をつけないといけないのが、就職・転職活動時に「事務職」を志望する場合です。
中小企業の事務は業務内容が多岐にわたりますので、入社前に思っていたものと違う仕事を任される可能性もあります。なにより企業が求めているものと志望している内容とがすべて合致することが少ないのです。
大企業でいうところの一般事務を志望していたにも関わらず、中小企業の事務職に転職した際に、専門性が必要とするような事務業も兼務せねばならなくなった場合、心身ともに大きな負担がかかることもあります。
もし中小企業に「事務職」で就職・転職を検討される場合には、以下を求人内容より確認し、どのような人材を求めているのかを面接時にしっかりと確認してください。
最低限、従業員数と事務員の人図はチェックしておく
従業員数が少ない企業は、必然的に人手が足りない状況ですので、事務の労務内容が多岐にわたる可能性があります。
また事務員の人数も確認しましょう。2、3人レベルだと、ほとんどすべての業務をおこなうと思ったほうがよいでしょう。
職務内容もできれば確認する
「実際にどのような仕事を担当するか」の記載がありますが、その中に「どのような仕事でもチャレンジできる」「幅広い業務をお任せいたします」と書かれている求人は、採用後に適正を確認しつつ、業務の枠を一般事務から他の事務へと広げていく可能性があります。
面接時に「具体的な事務職の内容」と「将来的に担当する可能性のある業務」も確認しておきましょう。
必要資格・推奨資格を聞いておく
必要資格はもちろんのこと、推奨資格は「企業としてはその資格に関連する業務を任せたい」という一種の宣言です。
専門性が高い資格であるほど、一般事務のほか専門的な業務の兼務を求めていることになります。
中小企業の事務職 まとめ
以上、中小企業の事務とその求人募集に関して見てきました。
「事務職」というと昔のイメージもあり「他の職種より楽なお仕事」というイメージを持っている人もいるかと思います。
しかし中小企業などは事務職全般を少人数の事務員に任せることもあり、思っていた以上にハードでかつ専門知識を求められる可能性もあります。その場合は労働時間も長くなることもあるでしょう。もちろん自分のキャリアアップ・スキルアップのために幅広い業務のほうがやりがいを感じる方もいるかと思います。
事務職といっても中小企業の場合は、会社によって大きく異なってきますので転職・就職活動時にはいま一度求人情報をよく見て、「事務職」と書かかれている中に何を求められているかを、しっかりと確認していましょうね。
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リカさん