今や終身雇用制度は過去のものとなり、最近は「早期退職」やリストラなど、雇用の見直しをする企業が増えています。
とくに今回のテーマである「早期退職」を募集する企業は年々増え続け、2020年には有名大手企業も退職希望者を募集しはじめています。
— ハジメくんの中の人@ビジネス系メディア運営 (@hajime_lcompass) March 14, 2020
この「早期退職制度」とは、具体的にどのような制度なのでしょうか。
一見「早期退職」にはガティブなデメリットばかりに注目されますがメリットもあります。この記事で詳しく紹介します。
目次
早期退職とは
ニュースでよく見かける期退職について理解しましょう。
早期退職はどんな制度なのか、以下で説明します。
早期退職とは
早期退職とは60歳、もしくは65歳の定年を前に退職をすることです。
通常企業から「早期退職」希望者の募集がかかり、早期退職するかどうかは任意です。
戦後から続く終身雇用制度はもはや機能しなくなっており、早期退職制度を利用して人員・人件費の削減をはかろうとする企業が増えてきています。
直近では東芝は約1,400人、富士通は約2,800人の早期退職者を募集したこともあり、特に製造業では積極的に用いられ始めている制度です。
早期退職 対象年齢は何歳からが多いの?
早期退職の対象年齢は、40歳からが多いですが企業の中には30代も早期退職の対象とするところがあります。
早期退職の対象年齢は企業が決めることができるようになっています。
実際に早期退職に手を挙げる人は、40代後半〜50代の人が多い傾向にあります。
早期退職制度と選択定年制度の違い
「選択定年制度」という言葉を聞いたことがありますか?
選択定年制度も、早期退職制度と同様に自分で退職のタイミングを決めることができます。
「早期退職」のメリットについては以下で解説しますが、選択定年制度も同様に退職金割り増しなどが適用されます。
選択定年制度は一定以上の勤務年数に達した人全員が対象となります。また60歳以降の再雇用社員が退職するか、残るかを決めるのも選択定年制度の一環だと言えます。
早期退職制度と選択定年制度の大きな違い「会社都合の退職」なのか「自己都合の退職」です。
「早期退職制度」は基本的には「会社都合」なので、失業保険の面で有利になりますが、「選択定年制度」は基本的には「自己都合の退職」になります。
早期退職制度 | 選択定年制度 | |
退職時期 | 会社が指定した時期 | 自分で指定が可能 |
退職金について | 割増されることが多い | 割増されることが多い |
失業保険の手続き | 会社都合になる | 自己都合にある |
※会社によって異なります。
自己都合退職の場合、失業保険の給付開始に時間がかかります。
早期退職で考えられる4つのメリット
早期退職のメリットには、以下の4つが挙げられます。
- 退職金が割り増しされることがある
- 再就職支援が受けられることがある
- 転職がキャリアアップになることもある
- 失業保険をすぐに受給できる・受給期間が長い
それぞれのメリットについて、以下で解説します。
退職金が割り増しされる
早期退職に手をあげた場合、「特別損失」という名目で退職金が割り増しされます。
60歳まで勤めた場合にもらえる退職金よりも多い退職金が支給されます。退職金割り増し分の相場は「年収の2倍」とも言われています。
通常の退職金の金額にそれだけの額が加算され、受け取れることができます。
再就職支援が受けられる
早期退職を利用すると再就職支援を行っている会社もあります。
再就職先として会社が関連企業や小会社などのポストを優先的に紹介してくれることもあります。
もちろんのことですが年齢が若いほど再就職もしやすくなるので、近々転職を考えているなら早期退職を利用するのも方法の1つです。
転職がキャリアアップになることもある
早期退職後の転職によって、キャリアアップする人もいます。
以前から会社との相性に違和感を感じている人や、能力や技術があるにもかかわらず社内で正当に評価されていない人は、早期退職を利用して早めに退職して転職することで新しいキャリアで成功する人もいます。
有名企業で働いて実績がある人であれば「早期退職」後、転職先で役職をもらうことができる人もいます。
割増分の退職金に加えてキャリアも積めるため、再就職がうまくいけば早期退職は人生にとってプラスに働くでしょう。
失業保険をすぐに受給できる・受給期間が長い
早期退職制度を利用すると、「会社都合での退職」となります。
会社都合の退職は、会社の赤字による人員削減などが原因の解雇などの場合に適用されます。
仕事が合わない、体を壊した、転職したい…などの退職理由は「自己都合」となり、失業保険を受け取るには3ヶ月の「給付制限」が設けられます。
つまり給付開始まで3ヶ月も待たなくてはなりません。
一方、早期退職は会社都合での退職扱いなので、申請後最短1週間で失業保険を受け取ることができます。
また、自己都合の退職の場合の失業保険の上限は約118万円に対し、会社都合の場合は上限約260万円です。
国民健康保険料も会社都合の場合の退職時のみ最長2年間適用される減額制度があります。
早期退職のデメリット
以上を踏まえると早期退職は一見、メリットだらけに思えるかもしれません。
しかしもちろん早期退職のデメリットもあります。
- 安定した収入がなくなる
- 収入が無い期間の年金支給額が減ってしまう
- 転職先が決まらない人もいる
この3つのデメリットは、今後の生活を左右する大きな問題です。
以下で詳しく解説します。
安定した収入がなくなる
早期退職すると、当たり前ですが仕事に行かなくなります。そのため、安定した収入がなくなります。
すぐに再就職ができればよいものの、40代後半・50代になるとそう簡単に次の仕事が見つからない可能性も十分考えられます。
失業保険が給付されている間はよいものの、給付が終了した後は貯蓄を切り崩して生活していかなければなりません。
定年が70歳まで引き上げられようとしている現状を考えても、早期退職後に再就職しないことはリスクのある選択であり、たとえ一時的であっても年金支給まで収入が途絶える危険性は十分考慮しておかなければなりません。
収入がない期間の年金支給額が減ってしまう
早期退職制度を利用すると、年金支給額が減ってしまいます。
会社員は厚生年金・国民年金の両方を払っていますが、退職して再就職しない場合には、厚生年金は基本的には支払わないことになります。
厚生年金は20歳から60歳までの支払額の総額によって給付金額が変わります。支払わなければその分年金が減額されるのは当然のことです。
転職先が決まらない人もいる
再就職支援制度を設けていない会社もあります。
転職サイト・転職エージェントに登録して求人を受けても、年齢が高すぎると書類選考の通らなさに愕然とする人もいるほどです。
30代・40代なら再就職の見込みはありますが、とくに50代に差し掛かると転職は厳しくなってしまうのが事実です。
転職先が決まらない場合、年金支給開始までどのように収入を得るかどうかは死活問題となってしまいます。
せっかく得た割り増し分の退職金を切り崩すことになりかねません。早期退職するなら、再就職の見通しが立っているのかどうかを慎重に考えましょう。
早期退職に向いている人
早期退職には向いている人・向いていない人がいます。下記は早期退職に向いている人・向いていない人の特徴です。
◎退職後も転職先が見つかりそうな人
◎仕事以外で充実した時間が過ごせる人
◎将来の目標がある人
×老後資金が溜まっていない人
×将来設計ができていない人
×家族からの理解が得られない人
もし早期退職を利用するか迷っているなら、自分がどのタイプにあてはまるのかを考えてみてください。
以下で詳しく解説します。
退職後も転職先が見つかりそうな人
年齢が比較的若く退職後も転職先が見つかりそうな人、転職によってキャリアアップが見込める人は早期退職に向いています。
会社が積極的に再就職支援をしている場合も、早期退職に踏み切ってみるのもよいでしょう。
早期退職に手を挙げる前に、一度転職エージェントに相談して自分の市場価値を確かめておくことをおすすめします。
ハジメ
仕事以外で充実した時間が過ごせる人
定年まで数年しか残っていない50代後半の人で、貯蓄が有り仕事以外に没頭できるものがあるなら早期退職することで幸せなリタイアライフを送ることができるでしょう。
年金支給までボランティアをしたり、教育事業に携わったり、趣味を極めたり自分の店を開くなどさまざまな人がいます。
仕事以外に時間を使いたいものがあるなら、早期退職も選択肢の1つです。
リカさん
将来の目標がある人
将来の目標があって、今の環境ではその目標を達成できないという人は早期退職に向いています。
特に企業を試みている人は早期退職を利用することをおすすめします。
割り増しした退職金がまとまって入ってくるため、起業資金にあてることができるからです。
また異業種への転職をしたいものの年収低下が懸念される、という場合も早期退職をすれば退職金が入るため、思い切りやすくなります。
早期退職は向いていない人
反対に将来の蓄えがない人や家族の理解がない人は早期退職をしないほうがいいでしょう。
老後資金が溜まっていない人
早期退職をすると割り増しした退職金が手に入るものの、老後資金が溜まっていない人にはおすすめできません。
仮に退職金がなくとも十分生活していけるだけの資金がないと、早期退職によって困窮してしまう可能性があります。
年齢が高くなるほど再就職が難しくなります。
収入源が見込めないままの早期退職は非常に危険なので、蓄えがない場合にはしばらく勤務を続けるか、定年まで勤め上げる方がよいでしょう。
将来設計ができていない人
将来設計ができていないなら、早期退職に手を上げることはやめておきましょう。
退職後生活費はどうするのか、住宅ローンはあるのか、よく考えておかなければなりません。
将来の見通しが立っていないまま早期退職すると、再就職がうまくいかずに転職活動が長引く可能性が考えられます。
退職後ダラダラと過ごして貯蓄を切り崩す事態に陥りやすいので、早期退職の前にまずは将来設計が必須です。
家族からの理解が得られない人
早期退職をするなら、家族からの了解は必ず得ておきましょう。
家族を養っている場合、早期退職の選択は自分一人だけのものではありません。
退職後は自宅で過ごす時間が長くなります。家族の反対を押し切ってしまった場合、家族の風当たりが強く家で過ごしても居心地悪く感じてしまうこともあります。
家族に無断の早期退職のせいで熟年離婚に至る夫婦もいるほどなので、家族からの理解は非常に大切です。
早期退職を決める前に考えておかないといけないこと
自分は「早期退職に向いている」と思っても、すぐに早期退職に踏み切ってはいけません。
考えなければならないことがあります。
以下で紹介する3つを踏まえて、早期退職をするようにしてください。
将来に必要な資金を具体的にシミュレーションしよう
早期退職する前に将来必要な資金を可能な限り具体的にシミュレーションしましょう。
家賃、生活費、趣味…起業するなら起業資金も必要です。早期退職後に再就職しない場合、安定した収入が絶たれることになります。
果たしてそれでも十分に満足できる暮らしを送ることができるのか、細かくシミュレーションしてください。この作業を面倒だと思うなら、早期退職はおすすめしません。
もらえる年金支給額を計算しよう
早期退職する場合の年金支給額を計算して、定年まで勤めた場合の金額と比較してみてください。
その金額の差に不安を感じないなら、早期退職をしても大丈夫でしょう。
日本年金機構のHP「ねんきんネット」では将来受け取ることができる見込み受給額を計算することができます。
参考 日本年金機構ねんきんネット年金支給額を計算する時には、ぜひ利用してみてください。
家族にきちんと理解してもらおう
早期退職をするなら、家族にきちんと理解してもらうことが大切です。
なぜ早期退職したいのか、退職後には何をしたいのか、退職後の収入はどうなるのか、など家族が心配に思うことを1つずつ丁寧に説明するようにしてください。
それでも家族から反対されるなら、早期退職は踏みとどまるべきです。
家族は何に対して納得できないのかを見極め、家族の不安をまずは取り除くようにしましょう。
早期退職について まとめ
早期退職とは、定年を迎える前に退職をすることです。
会社都合の退職となるため退職金の割増や再就職支援、失業保険の給付などでメリットがあるものの、その後の将来設計をしないまま早期退職に踏み切ると必ず後悔することになります。
早期退職後に再就職しないなら、安定した収入を失い、貯金を切り崩して生きていくことになります。
それでもよいのかしっかりシミュレーションし、家族の同意を得ることが必要不可欠です。
早期退職はうまく利用すればメリットが多い制度ですが、考えなしでは非常にリスクが高くなるということも覚えておきましょう。
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